おしえて、本庶先生!最先端の医療って?

おしえて、本庶先生!最先端の医療って?

生物は謎に満ちているから、医療が進歩する可能性はまだまだあります。

ヒトをはじめとする生物は複雑で多様です。だから、そのしくみを理解するのに道は遠い。逆に言えば、そこに研究のチャンスがあるということです。いまの医療の進歩があるのは、大勢の研究者が時間をかけて、成功と失敗を繰り返しながら着実に研究を進めてきたから。うまくいかなかったとしても、それはムダではなくて、研究するのはそこではなかったということを理解できるのです。いま中学生や高校生の皆さんが、大人になっても研究することがなくなる心配はない。好奇心をくすぐられるような謎はまだまだ残っていて、その先に、医療が進歩する道も残されているんです。

最先端の医療を支えるのは、長年積み重ねてきた基礎研究です。

新しい医療の発見には、研究の積み重ねが大切です。例えば、新型コロナウイルスのワクチンとして注目されているRNAワクチンも、長年の基礎研究があったおかげですぐに実用化できました。ウイルスが出てきてからあわてて研究するということでは、対応するのは難しいんです。人々が必要とするタイミングで、研究者たちが長い時間をかけて得た知識やノウハウを活用できたということです。

失った体の機能を取り戻す。夢のような医療が現実的になってきています。

病気やケガなどで失われた体の組織や臓器を、例えば患者さんの細胞を使って、もとのように働くようにする再生医療についても、研究が進んでいます。実際に、目の難病の治療などでiPS細胞を使った手術が行われ、安全性の確認も進められています。皮膚や臓器など、体のいろんな組織のもとになる細胞の力を活用する再生医療。ひと昔前は夢物語だった医療の実現に、希望が持てるようになってきました。

これからの介護や医療は、ロボットテクノロジーが導入されるでしょう。

これからの社会はますます高齢者の割合が多くなります。いま、介護はかなり人の力に頼っていて、肉体労働がメインになっています。そうした状況を解消するために、ロボットテクノロジーが導入されるのは当然でしょう。また、研究開発や医療においても、人の手でやっていた仕事がロボットテクノロジーに代わり、機械化されるところが出てくるでしょう。

がん治療は、免疫の力を利用する時代になってきています。

免疫の力を利用してがんを攻撃する、免疫治療。これからのがんの治療法については、この免疫療法が主流になってくるでしょう。今後は研究が一層進んで、治療対象となるがんの適用範囲も広がり、手術や抗がん剤、放射線での治療との組み合わせによって、治癒(ちゆ)率もどんどん上がってくることでしょう。

長寿や老化の研究も進んでいますが、自ら健康維持に努めることが大切です。

歩いたり、活動する能力が損なわれたりすると老化が進み、寝たきりになると急激に体力が下がって長生きできません。健康で長生きするために一般論として言えるのは、筋力の大切さ。免疫力の向上にも筋力は関係しています。筋力を維持するためには適度な運動や栄養、良い睡眠が大事ですが、医療が進んだいまでも、これは昔から変わりません。

本庶 佑(ほんじょ たすく)先生

神戸医療産業都市推進機構 名誉理事長
医学者、博士(医学)

幼いころは天文学者にあこがれていたが、中学生のころに読んだ野口英世の伝記に感銘を受けて医学の道を志し、京都大学医学部へ。大学院修了後、アメリカに渡り、カーネギー研究所や米国国立衛生研究所でゲノムの最新技術をもとに研究を進め帰国。がん細胞が免疫のはたらきにブレーキをかけるしくみを発見し、新たながん治療法への道を切り拓いた功績により、2018年ノーベル生理学・医学賞を受賞。

取材メモ

本庶先生って、こんな方!

本庶先生の趣味はゴルフ。ゴルフはよく歩くスポーツだから、シニアの皆さんの健康維持にもおすすめなんだとか。実は阪神タイガースの熱烈なファンでもあるんですって。