神戸医療産業都市(KBIC)とは・・・

「富岳」について知りたい5つのこと

世界最速のスーパーコンピュータ「富岳」。ニュースでよく目にする「富岳」ですが、じつは神戸医療産業都市の中にあるのです。理化学研究所計算科学研究センターを訪ねて、わたしたちが知らない「富岳」について聞いてきました。

スーパーコンピュータって馴染みがないのですが…そもそも「富岳」って何ができるの?

「富岳」の強みは圧倒的な計算速度で、1秒間に約44京2010兆回計算ができます。またそれを活かして空気中の物質の動きを計算し、シミュレーションすることもできます。皆さんにも馴染み深い例で言うと天気予報が挙げられます。今はまだ予報が外れることもありますが、将来的には「富岳」の研究で雲や気温・湿度などを細かく計算することで、「どこで雨が降るか」が精密にわかるようになる可能性があります。

ニュースで話題になった新型コロナウイルスの飛沫シミュレーションもし、普通のパソコンで計算したら?

実は普通の家庭用パソコンと「富岳」、できることにあまり差はないんです。ただ、計算速度が全然違います。さらにスーパーコンピュータの中でも性能差が存在していて、「富岳」と「富岳」の前身である「京」でも計算速度に最大100倍以上の差が存在しています。新型コロナウイルスについては急いで解明する必要があったので、最も計算速度がはやい「富岳」を利用したんです。もし飛沫計算(ひまつけいさん)を家庭用P Cでやったら何十年もかかってしまいます。

パソコンのように、カンタンに操作できる?

「富岳」は2021年から本格運用を開始し、民間企業や学術機関に貸し出して利用してもらっています。操作は世界中どこからでもできます。実はスーパーコンピュータってクセが強くて操作が難しいものもあるんですが、「富岳」はなるべく業界標準にして誰でも使いやすいようにしました。それは「富岳」を開発する際に目標としていた「作ってなんぼ、使ってなんぼ」の精神を達成するためです。スーパーコンピュータは作って終わりではありません。その後たくさん利用いただいて社会に貢献してもらうためにも操作がしやすいようになっています。

「富岳」という名前の由来は?

「富岳」とは富士山の別名で、一般公募をして名づけました。5000件以上の応募があり、そのうち2名の方が「富岳」という名前で応募されたんです。世界トップレベルの性能を持つことを表し、国内外の人たちに親しまれやすい名前であることから決まりました。さらに名前と合わせて、日本一の富士山をモチーフにしたロゴを採用しました。富士山の高さが性能の高さを表し、山の裾野(すその)の広がりが課題解決できる分野の拡大を意味します。

故障とかするんですか?

「富岳」は16万台のパソコン(CPU) が連なったもの。そのままでは皆さんが使っているパソコンより16万倍故障する可能性が高いということになります。ですから高い信頼性と、さまざまなケアが必要になります。ただ、どこか一部が故障してもそこを切り離して動き続け、全体としては大きな問題にはなりません。あとは人の手でメンテナンスや修理をしています。

©RIKEN

お話を伺った方

松岡 聡さん

理化学研究所計算科学研究センター長
計算機科学者、博士(理学)

中学生のころからコンピュータをつくることが趣味で、コンピュータを専攻できる東京大学理学部へ進む。高校から大学院時代にかけて、草創期のファミリーコンピュータなど、ゲームソフトの開発にかかわったという逸話も!2014年に日本人として初めて、スーパーコンピュータ分野のノーベル賞とも言われるシドニー・ファーンバック記念賞を受賞。「富岳」の総責任者にしてスーパーコンピュータの世界的権威。