眼に関する総合的支援を行うワンストップセンターの核
神戸アイセンター病院
標準医療から最先端高度医療まで
神戸アイセンター病院は、神戸市立医療センター中央市民病院と先端医療センター病院の眼科機能をまとめ、より拡充させて、2017年12月1日に開院しました。最も大きな特徴は、日本初の眼に関するワンストップセンター、神戸アイセンター内の病院であることです。ワンストップセンターとは、研究・治療・視覚障がい者支援が一つにまとまり、互いに連携している場です。同病院はその核となる治療部門を担っています。
眼は小さな臓器ですが、専門領域が非常に細かく分かれる特殊な器官で、疾患も多種多様です。同病院では、成人を対象とした疾患のすべてをカバー。アイセンター内で研究開発と治療が一体化していることで、標準医療から、日本初、世界初の最先端高度医療まで高い水準で行えます。院長の栗本康夫氏は「すべての患者さんに何らかのソリューションを提供可能です。将来、実現するであろう『今はない治療』の情報も紹介できます」と話します。
さらに、センター内にある、視覚障がい者支援を幅広く行うビジョンパークとの密接な連携も、画期的な特徴です。残念ながら「今ある治療」では見えるようにならない視覚障がいのある方にとって、見え方の問題だけでなく、情報が取れないという点も大きな問題です。人は情報の8割程を視覚から取るとされており、視覚障がいは、いわば“情報障がい”とも言えます。ビジョンパークでは、その点についてもさまざまな解決策を提案できます。就学や就労などの社会復帰支援をはじめ、障がい者スポーツの紹介なども行っています。栗本氏は「見えなくなって家にこもりがちだった患者さんが、ビジョンパークの設備でボルダリングを始めてから、とてもアクティブで明るくなられて、私たちも嬉しかったですね」と、手応えを感じています。
チーム医療のさらなる充実を目指す
神戸市の眼科中核病院としての役割も大きく、地域に密着し、市内各医療機関との連携、治療体制が整えられています。また、救急医療に関しても中央市民病院と連携して、中央市民病院救急外来で24時間365日、当直1人体制で対応しています。
中央市民病院をはじめ、神戸医療産業都市内にある医療機関や研究施設との繋がりは強く、栗本氏は「iPS細胞を用いた世界初の移植手術の成功についても、当院の前身である中央市民病院の眼科と先端医療センター病院、理化学研究所などが非常に緊密に協力することで成し遂げられました」と振り返ります。現在も、理化学研究所と共同で進める研究があり、眼の病気に関する新たなソリューションの創出を目指します。
今後も眼科中核病院として地域医療をベースとし、質の高い標準治療から最先端高度治療まで、より早くより安全に提供すべく、チーム医療のさらなる充実を図っていきます。
神戸市民の皆さんの眼の病気の“最後の砦”として、引き続き、ご信頼を得られるように全力を尽くしてまいります。「今ある治療」の中での先端治療をいち早く提供できるようにし、さらに、「今はない治療」を開発、神戸をはじめ全国、そして世界の患者さんに貢献していきたいと考えています。
世界に先駆けて安全な再生医療製品の
安定供給を目指す
大日本住友製薬株式会社 再生・細胞医薬神戸センター
再生・細胞医薬研究の先駆者
従来の医薬品や手術での治療が難しい病気に対し、新たな治療法として世界的に注目される再生医療。化合物による薬などではなく、細胞を用いて機能の再生を図るものです。100年以上の歴史を持つ大日本住友製薬では、力を注ぐ3つの研究分野の一つに「再生・細胞医薬分野」を掲げています。その研究の本拠地が「再生・細胞医薬神戸センター」で、2014年4月に開設されました。
同社は1990年代から本格的に中枢神経系の再生研究に取り組んできたこの分野におけるトップランナー的存在です。中枢神経は脳と脊髄にあり、身体全体に広がる末梢神経と異なり、再生が難しいとされてきました。たとえば、足や指が損傷を受けてもその末梢神経は再生することもありますが、脳梗塞や脊髄損傷などにより1度切れてしまった中枢神経は元に戻りません。
取締役常務執行役員の木村徹氏は、「最初は神経の切れた線維を再び伸ばそうと考えていたのですが、しだいに神経細胞そのものを移植したり再生したりできるのでは…と研究がシフトしていきました。iPS細胞を使った共同研究を2011年に始めており、もっと本格的に取り組もうとしていた2012年に京都大学の山中伸弥先生がiPS細胞の発見でノーベル生理学・医学賞を受賞され、追い風となりました」と、再生医療研究が一気に加速したと言います。
神戸医療産業都市に拠点を置いた理由を、「再生医療に関連の深い発生生物学の世界的な研究拠点、理化学研究所があり、その近くに研究所を置きたかったのが第一です。元々、共同研究を行っていましたし。さらに、関連企業や団体も多く、物理的にも近いので連携しやすい環境が整っています」と話します。稼働して5年。「先端医療産業都市として有機的に機能しているのは、日本で唯一と言ってもいいのでは」との実感を持っているそうです。
実用化へ高まる期待に応える
「再生・細胞医薬神戸センター」が関わり、同社で事業化が進められている研究は、「加齢黄斑変性」「パーキンソン病」など6つあります。「加齢黄斑変性」は、世界初のiPS細胞を用いた手術対象となった眼の難病です。「パーキンソン病」は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と共同で研究。「パーキンソン病」とは脳内のドーパミン神経が失われる病気で、既存薬ではドーパミン神経を活性化して症状を和らげることしかできず、しだいに薬が効かなくなっていくのですが、患者さんに細胞を移植すれば、身体を動かすことができるようになるとされています。これらの治療法は、現在治験や臨床研究が進められており、数年後の実用化が期待されています。
「今後、手技も含めた普及活動や、医薬品の法律が異なる諸外国へのグローバル展開、さらには次世代再生医療への挑戦など、課題にも精力的に取り組みます」と木村氏。国内外を問わず多くの研究機関、関連企業等とより緊密に連携しながら、世界に先駆けて安全な再生医療製品の安定供給を目指していきます。
神戸医療産業都市は再生医療の世界的な集積地の一つと言えるでしょう。長年、神経の再生医療に取り組んできた当社も、ここでさまざまな研究機関や企業等と繋がりながら、皆さんに革新的な新薬をお届けしたいと、再生医療に熱く、アクティブに取り組んでいます。順調に、着実に進んでいますので、どうぞご期待ください。