4研究部のご紹介
次世代医療開発センター(HBI)
2021年春以降、HBIの新たな環境のもとで研究活動を推進する研究部の代表者にクローズアップ。それぞれの研究活動をご紹介いただきます。新設の「感染症制御研究部」では、研究テーマや今後に向けた展望などについても語っていただきました。

本庶 佑Honjo Tasuku
公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構 理事長
今春、クリエイティブラボ神戸内に新たに「次世代医療開発センター(HBI : Honjo Kobe Research Center for Biomedical Innovation)」が開設されました。HBIは公益財団法人神戸医療産業都市推進機構の設立20周年と、本庶佑理事長のノーベル生理学・医学賞受賞を契機に誕生。既存の研究部を一定集約し、新たに感染症制御研究部を加え、研究機能の強化と研究開発の加速を目指します。施設内には、共同研究のための機器室や研究者らが交流できるオープンスペースを整備。監修を務めた本庶理事長に、HBIの役割や期待することなどをうかがいました。
共同研究ラボ、共用機器室、高度な動物実験飼育施設を備えたHBIには、先端医療研究センターから免疫機構研究部、神経変性疾患研究部、血液・腫瘍研究部が移転。新研究部も創設され、分野の異なる研究者同士がリアルタイムで交流できる環境が整っています。研究というのは、例えば、たまたま昼食を共にした人と話をしていたら、とても役に立つ情報が得られたということが結構あるもの。“予期せぬ情報交換”が気軽に行われ、研究に新しい発展が生まれることを期待しています。将来的にはHBIを中心として周辺エリアが活性化し、神戸医療産業都市が発展していくことが望ましいと思っています。
HBIでは新しく「感染症制御研究部」が立ち上がりました。感染症は機構に従来ある研究分野とオーバーラップすることがなく、また、現代において非常に重要な課題です。新設の研究部に専門家たちが集い、ノウハウを構築することによって、関連企業も集まりやすくなり、新しい医薬品や検査薬への展開を視野に入れた連携が取りやすくなると考えています。
今後は新型コロナウイルスだけでなく、さらなる新しい感染症が出てくる可能性があります。日本はパンデミックに備えたワクチン・治療薬の開発や社会実装に向けた産学連携の強化が必要です。HBIの感染症制御研究部がその重要な拠点の一つになってくれればと思います。
新研究部のけん引役には、現在、国立感染症研究所ウイルス第二部で部長を務めている村松正道先生を迎えました。彼は感染研と機構の連携づくりに取り組みたいと言ってくれています。これまで培ってきた経験を生かし、情報交換や人材確保などにおいて非常に大きな力となってくれることでしょう。免疫機構研究部、神経変性疾患研究部、血液・腫瘍研究部は新しく研究がしやすい環境に移ったことで、これまで以上にコミュニケーションを活発にし、互いに切磋琢磨することができれば、なお良いと思っています。
神戸は全国でも新型コロナウイルスの変異株の捕捉率が高いです。機構では神戸市民のデータに基づく認知症などの臨床研究に取り組んできた実績があり、情報の重要性に対する市当局の理解が早いのでしょう。
国産初の手術支援ロボット「hinotori™」の誕生や、新型コロナウイルスの感染対策におけるスパコン「富岳」の貢献など、最近は神戸医療産業都市内の企業や組織の活躍がニュースで取り上げられることが多くなりました。機構の前身である先端医療振興財団が誕生した20年前と比べると、都市の力を市民が実感できる機会が増えてきているのではないかと感じています。最初のころは何をしているところなのか理解されている市民は決して多くはありませんでした。少しずつでも具体的な形が見えてくると、なるほどと納得してくださる人も出てくると思います。
実のところ、医薬品など医療関係の開発には最低でも20年はかかります。私が関わったがん免疫治療薬「オプジーボ®」も、PD-1の発見から治療薬として承認を得るまで22年かかりました。近年は神戸医療産業都市での研究開発を終え、治験準備に入っている医薬品が次々に出てきており、その数は今後もどんどん増えていくだろうと期待を寄せています。
建物や設備が良くなったところで、研究費がなければ研究を続けていくことはできません。10年、20年先に向けてしっかりとした財政基盤を確立し、安定化させることが非常に重要です。研究機能の充実を目的として創設した「本庶記念神戸基金」で皆様にご寄付をお願いするとともに、神戸市や企業にもご支援いただき、研究者たちが研究に没頭できる環境を整えることが理想です。
また、さまざまな支援を受けて日々研究に取り組めている研究者は、単に自分の好きな研究を突き詰めていくだけではいけません。HBIではその成果をなるべく市民に還元していくことが最終的な目的であり、責務でもあります。研究成果を企業に橋渡しする機構の部門にしっかりとサポートしてもらいながら、新しいシーズを実用化につなげていくことも大事な仕事の一つでしょう。
神戸医療産業都市推進機構は各センターがそれぞれの役割を担いながら一層連携を強め、市民に貢献し世界に向けて発信する組織として、さらに成長していきたいと思います。
次世代医療開発センターHonjo Kobe Research Center for Biomedical Innovation(HBI)
HBIは本庶佑理事長の2018年ノーベル生理学・医学賞受賞を契機として、理事長が長きに渡ってがん免疫の基礎研究から医薬品として実用化されるまでに取り組んできた知識と経験を活かし、神戸医療産業都市推進機構の研究機能を強化させることを目的に開設されました。健康長寿社会に向けた神戸発の医療シーズの実用化を推進し、革新的な医療技術の社会実装を目指すことで、神戸医療産業都市のさらなる推進を図ります。
英語名称は、理事長の名前を冠したHonjo Kobe Research Center for Biomedical Innovation、ロゴマークは、HBIをベース=場(B)に見たて、そこに集まる人・情報・知が連結し、イノベーションが生まれる様を表現しています。
次世代医療開発センター(HBI)
2021年春以降、HBIの新たな環境のもとで研究活動を推進する研究部の代表者にクローズアップ。それぞれの研究活動をご紹介いただきます。新設の「感染症制御研究部」では、研究テーマや今後に向けた展望などについても語っていただきました。