温かな心が通い合う最先端の低侵襲がん医療を実践
神戸低侵襲(ていしんしゅう) がん医療センター
身体に優しい多種多様な治療法
医療機器の技術革新により、近年は患者さんの身体に負担が少なく回復が早い低侵襲治療に取り組む病院が増えています。2013年に開院した神戸低侵襲がん医療センター(KMCC)もその一つ。リンパ節への転移がない早期のがんや、手術をすると大きくQOL(生活の質)が下がる患者さんなどに対して「切らずに治す」最先端治療を行っています。
血液がん以外のがんを対象とした治療は、3種類の最新装置を用いる放射線治療が中心。いずれも精度が高く、腫瘍に対して多方向から集中して放射線を照射することができます。呼吸で動く腫瘍を正確にとらえ、小さながんもピンポイントで照射できる「サイバーナイフ」、腫瘍の形に合わせて照射する「トモセラピー」、広範囲を短時間で照射するだけでなく、回転しながらや呼吸に合わせた照射も可能にした「トゥルービーム」を備え、それぞれの特長を生かした治療を提供。放射線治療は単独で行うだけでなく、抗がん剤治療と併用する化学放射線療法、免疫療法、カテーテル治療、内視鏡治療など、さまざまな治療法と組み合わせることで治癒を目指します。また、がんによる心身の痛みや辛さを和らげる緩和ケアにも取り組んでいます。
KMCCは紹介状がなくても受診できます。また、兵庫県内の患者さんがほとんどを占めていますが、要望があれば県外からの患者さんも広く受け入れています。通院が難しい遠方の患者さんに対しては、地域のかかりつけ医と連携し、安心して治療に向き合えるようサポートしています。
がん患者さんの心と共に歩む
がん治療を取り巻く環境の変化は目覚ましく、診断精度を高めるAI技術や、血液、尿、唾液などを利用した診断技術がどんどん普及しています。KMCCでは時代に即した最先端治療を取り入れ、臨床研究や治験を積極的に推進する一方で、人と人とのつながりを大事にした医療を重視。「和顔愛語」の精神を持ち、患者さん一人ひとりの声に耳を傾け、思いに寄り添う治療やケアを実践してきました。

病院長室には座右の銘として掲示されている
最近はコロナ禍による受診控えの影響で、がんが進行してから見つかるケースが増加。藤井正彦病院長は現状を危惧し、小さな異変も見過ごさず、速やかに受診してほしいと訴えます。「昔は予後が良くなかった部位のがんも、検査技術の飛躍的な進歩によって早期発見が可能となり、10年後の生存率が年々上がっています。当院では安全・安心に配慮し、感染対策を徹底しています。定期検診や診察を怠ることなく、早期治療につなげていきましょう」
より侵襲の少ないがんの診断や治療の技術進歩は今後も続きます。当院では積極的に最新技術を取り入れ、神戸医療産業都市内の医療機関と連携し、治療体制を整えています。身体の不調があれば気軽にご来院ください。また、患者さんの悩みや不安をサポートするため、オンラインや電話による受診相談もスタートしました。こちらもぜひご活用ください。
最先端分野で輝く柔軟な発想力と技術力を育成
甲南大学 フロンティアサイエンス学部生命化学科
学生の個性と能力を伸ばす環境
甲南大学フロンティアサイエンス学部生命化学科(FIRST)は、ナノテクノロジー(化学・物理)とバイオテクノロジー(生物)を融合したナノバイオテクノロジー(生命化学)を学ぶ場として、2009年に開設されました。医療や食品、新素材などの開発に応用できる基礎研究に取り組み、社会に貢献する人材を育成しています。
FIRSTでは、学生の「実験をしたい」という意欲に応え、研究中心のカリキュラムを編成しています。一般的な大学では1年次に履修する教養科目を2、3年次の配当科目とし、1年次から実践的な装置や器具を使った専門実験をスタート。1、2年次で基本的な実験操作を身に付けます。3年次になると研究室に所属し、研究活動を開始。時間をかけて卒業論文研究に取り組み、4年間でしっかりと専門的な知識と技術を修得することができます。
また、学びに集中できる独自の学習環境も整備されており、入学時から学生一人ひとりに「マイラボ」と呼ばれる専用デスクとロッカーが用意されます。自分の空間があることで大学への愛着が深まり、学習意欲の向上にもつながっています。研究ゾーンに隣接するマイラボは4フロアにそれぞれ設置され、学生たちはいつでも教員に質問することができ、また、各階ごとに異なる研究スタイルや研究内容に触れたり、年代を超えた学生や教員との交流に刺激を受けたりしながら、自分のビジョンを描いていきます。
産学官の連携強化を目指して
FIRSTは神戸医療産業都市にキャンパスがある利点を生かした課外活動にも力を注いでいます。「神戸医療産業都市一般公開」では、小・中学生向けの実験講座に学生がティーチングアシスタントとして参加。社会に向けて自分の存在をアピールする良い機会となっています。また、研究機関や企業などから要請があれば、短時間の実験補助に就き、社会体験をする「ナノバイオコンビニエントプラン」も実施しています。
近年は開かれた大学としての役割を重視。「産学連携サロン」や「クラスター交流会」の開催を通して周辺の機関や企業と関係性を深め、連携しながら研究や教育を推進してきました。2018年からは同キャンパスを「メディケミカル拠点」と名付け、医療技術や薬剤開発のための研究基盤を形成するだけでなく、神戸医療産業都市の企業や医師と連携し、医療関連分野で活躍できる人材を育成することも目指しています。その一環として、大手製薬会社の日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と包括連携協定を締結。藤井敏司学部長は「本学部では、治療に役立つ素材や検査薬などの研究開発が可能。ものを作って評価できるという強みを広くアピールし、多くの機関や企業から頼られる存在になっていきたい」と目標を掲げます。

各学生の固有スペース「マイラボ」
「神戸医療産業都市一般公開」では、毎年多くの神戸市民の皆さんがご来校くださり、本学部の研究内容の展示や実験体験などを楽しんでいただいております。昨年と今年はコロナ禍でWeb開催となりましたが、いつかまた現地で開催できるようになれば、ぜひご来校ください。