遺伝子治療用製品の製造基盤を整備し、
地域貢献を目指す
株式会社シンプロジェン
独自のDNA合成技術で世界に挑戦
神戸大学発のスタートアップとして、2017年に設立された株式会社シンプロジェンは、非常に長い配列のDNAを正確に合成する独自技術を活用し、遺伝子治療用製品の設計・プロセス開発・分析の受託サービスを提供しています。遺伝子治療とは、これまで有効な治療法のなかった重篤な疾患を根治することが期待される新しい治療手段です。数年前には、脊髄性筋萎縮症や急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫を対象とする遺伝子治療用製品が治療に用いられるようになり、欧米を中心に開発競争が活発化しています。
グローバル市場が急成長を続ける中、精鋭メンバーを結集し同分野への参入に挑むシンプロジェンは、2022年12月、患者さんへの投与が可能な最終製品の製造に関して、国内外の開発パートナー企業との提携を発表しました。難治性疾患に苦しむ患者さんを救う画期的な治療法の芽が神戸で生まれています。
国の経済発展を見据えた事業を展開
同社は2022年12月、神戸アイセンターに拠点を構え る株式会社VC Gene Therapyから、眼の難病である網膜色素変性における遺伝子治療の開発を受託しま した。両社はポートライナーで1駅の距離にあり、「緊密な協業を進める上で、物理的な距離の近さは大変重要 な要素の一つである」と山本一彦代表取締役社長は言います。また、神戸医療産業都市内の企業連携によって 生まれたこの事業は「政府が推進する『スタートアップ・エコシステム※』構築の方針にも沿った、ライフサイエンス系ベンチャー同士の具体的な連携事例と言える」とその意義を強調。同社が入居するライフサイエンス 分野の最先端研究開発施設であるクリエイティブラボ 神戸(CLIK)など、研究開発に特化した神戸医療産業 都市内の施設を活用し、精力的に事業を推進しています。今後の同社のビジョンは研究開発から製造まで、神戸に遺伝子治療用製品の産業バリューチェーンを構築することです。山本社長は「日本の経済安全保障の観点からも、製造基盤を速やかに国内に整備することが極めて重要ではないか」との見解を示しています。この意見には、昨年CLIKを視察された岸田文雄内閣総理大臣や本年1月に視察された永岡桂子文部科学大臣からも理解が得られたとのこと。同社のさらなる活躍に熱い視線が注がれています。
※産学官等の連携でスタートアップを創出し、人材や技術、資金を呼び込んで発展を持続させていくこと
CLIK視察時の岸田首相と
遺伝子治療用製品の分野において、設計・開発・分析から製造に至るまでの一気通貫の産業バリューチェーンを神戸医療産業都市に構築すべく奮励努力しています。その実現により、神戸市に「良質な雇用」と「豊かな税収」をもたらしたいと考えていますので、応援をお願いいたします。
専門性の高いデータサイエンス教育で
先端IT人材を育てる
兵庫県公立大学法人 兵庫県立大学大学院
情報科学研究科
急速な情報科学技術の進歩に対応
兵庫県立大学大学院情報科学研究科は、データサイエンティストを養成する「データ科学コース」、スーパーコンピュータを駆使する計算科学者の輩出を目指す「計算科学コース」、健康医療分野へのデータ応用研究に取り組む「健康医療科学コース」、高い専門性を備えたセキュリティ技術者を育てる「情報セキュリティ科学コース」の4つのコースで編成され、各分野の第一線で活躍する専門家が教育者として指導にあたっています。同研究科が拠点の一つとする「神戸情報科学キャンパス」は、計算科学分野の研究機関が集積するポートアイランドの南側に立地。周辺機関等と連携し、超スマート社会の実現やビッグデータ利活用の促進に貢献できる先端IT人材の育成や教育研究が行われています。
医療・健康データを活用し病気を予防
なかでも「健康医療科学コース」では、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた心臓モデルシミュレーションの研究や、神戸市立医療センター中央市民病院と連携した健康・医療データ収集のあり方の研究など、神戸医療産業都市のリソースを活用した研究活動に取り組んでいます。同コース長であり、神戸リサーチコンプレックス協議会の専門委員も務める竹村匡正教授は、「神戸医療産業都市にキャンパスを置くことで、神戸医療産業都市推進機構の支援が得られ、ポートアイランド内の企業等との事業や研究が推進しやすくなった。私たちのデータ応用研究が多様な発想と結びつき、新しい医療サービスが生まれる可能性がある」と期待感をにじませます。
神戸医療産業都市で実現したい構想として竹村教授がまず挙げたのは、ポートアイランドにある全ての病院を1つの病院とみなして患者データ等を結ぶ、医療情報共有システムの構築です。「運用資金の問題などさまざまな障壁はあるが、具体化できれば院内業務の効率化や患者サービスの向上につながる」と主張します。また、神戸医療産業都市推進機構名誉理事長の井村裕夫氏(京都大学名誉教授)が唱える「先制医療※」についても言及。「市民の生活データと医療データをつなぎ、ゲノム情報やバイオマーカーなども用いることで、先制医療の実現化は可能。各人に合った病気の予防や早期介入を目指したい」と語りました。
※特定の疾患に罹患するリスクが高いと思われる人を選別し、発症する前に適切に治療的な介入を行い、発症を未然に防ぐ、もしくは遅らせようという概念
キャンパスでの研究会風景
神戸市には、市内在住・在学・在勤の方にヘルスケア関連の新製品等のモニター調査にご協力いただく「ヘルスケア市民サポーター制度」があります。ぜひ、楽しみながらご参加ください。モニター調査を通じて得たデータは大切に活用させていただき、皆さまの健康に寄与できるような製品・サービスの開発を進めていきます。