多職種連携を実践できる高度な医療従事者を育成
兵庫医科大学
チーム医療の重要性を意識づける教育
兵庫医科大学は1972年の創設以降、「社会の福祉への奉仕」「人間への深い愛」「人間への幅の広い科学的理解」を建学の精神とし、現代医療に貢献する有能な医師を輩出してきました。開学50周年を迎えた2022年には、ポートアイランドにあった同一法人の兵庫医療大学を統合。医学部に加え、薬学部、看護学部、リハビリテーション学部を開設し、西宮・神戸キャンパスに4学部4研究科を有する「医系総合大学」として生まれ変わりました。
大学統合の意図について、「本法人では長年、質の高い医療を提供するために必要な多職種間連携の教育に注力してきた。このたびの統合により、以前にも増して学部間連携をスムーズに行える基盤が整い、チーム医療の実践的な教育に取り組んでいる」と明かす小山英則副学長。多職種が考えを認め合い連携することの意義を理解し、臨床の場で実践できる医療人材の育成を目指します。
学部と研究科の連携で広がる研究活動
今回の大学統合では、学部や研究科の垣根を越えた共同研究等を支援する「社学連携・研究推進センター」を新設。兵庫医科大学と兵庫医療大学がそれぞれ学部単位で行ってきた企業や自治体等との共同事業・研究活動について、相互連携で推進する体制を構築しました。同センター長も務める小山副学長は、「他学部・研究科の研究内容や実際の活動を知る機会が増えると、共同研究につながるチャンスが広がるはず。切磋琢磨することで研究のレベルも向上していくだろう」と期待を募らせています。
同大学では現在、理化学研究所やシスメックスなど、神戸医療産業都市に拠点を持つ機関・企業との共同研究が進行中で、2022年からはバイオベンチャーのヘリオスと、中皮腫に対するがん免疫細胞療法の研究も開始しています。小山副学長は「本学独自の研究シーズはまだ数多く眠っており、神戸医療産業都市の進出企業や研究機関、大学ともっと活発に情報交換ができれば、新たな共同研究に進展する可能性は高い。附属病院を持つ本学としては、治療法がない疾患の研究にも積極的に関与し、その成果を治療へつなげ、兵庫県民にいち早く届けたい」と意欲を示します。また今後は、社会貢献活動にも前向きに取り組む姿勢を見せており、子どもや市民を対象とした医療分野の啓蒙事業に注力していく方針です。
企業との情報交換会の様子
兵庫医科大学は、「EMPOWER THE PEOPLE 心に響く医を、私たちがいるかぎり」をスローガンに、より高度な多職種連携ができる次代の医療人育成を推進してまいります。また新しい発見・研究成果を市民の皆様にいち早く還元するだけでなく、次世代を担うこどもたちにも科学のおもしろさを伝え、アカデミックマインドを育むお手伝いができればと願っています。
回復期リハビリテーション専門病院の特異性を臨床研究にも活かす
西記念ポートアイランド
リハビリテーション病院
医療専門職による行き届いた支援体制
神戸市立医療センター中央市民病院などの急性期病院や地域の医療機関と連携し、365日体制で回復期のリハビリテーションを行っている西記念ポートアイランドリハビリテーション病院。急性期の治療を終え症状が安定した患者さんを受け入れ、早期にリハビリテーションを開始することで後遺症を最小限に抑えると共に、生活の質の維持や向上を図ります。入院中はリハビリテーション専門医や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がチーム一丸となって患者さんを支援。管理栄養士による栄養指導や食事提供のほか、歯科医師と歯科衛生士が口腔ケアや嚥下機能の回復・維持にも努め、1日も早い自宅復帰を目指します。
また、循環器内科、脳神経外科、総合内科、救急といった各分野の専門医が常勤し、精密検査が可能なMRIや骨塩定量検査※を導入するなど、合併症にも迅速に対応できる院内体制を構築しています。音楽療法士による音楽療法も取り入れ、精神面の回復にも力を注ぎ、自宅復帰率90%を実現しています。
※骨を構成するカルシウムなどの状態を測定する。骨粗しょう症の診断や治療に用いる。
多様な臨床データや経験を共同研究へ
また同病院では、実臨床から得た貴重なデータを医療の発展に活かそうと、さまざまな共同研究にも着手し、神戸医療産業都市内の医療機関や地域の大学等と連携して、骨粗しょう症予防やサルコペニア(加齢や病気に伴う筋肉量低下)に関する研究に取り組んでいます。小澤修一院長は「質の高い治療やケアを提供していくためには学問的な裏付けが必要であり、当院の医師やスタッフが率先して新しい情報を発信しているのは大変喜ばしいこと。院内の活性化やスタッフのモチベーションアップにもつながっている」と高く評価し、今後も臨床と両立しながら共同研究を推進していく予定です。
神戸医療産業都市については「先端医療が目覚ましく進歩し最新の医療情報が得られやすい環境に当院が置かれていることは、臨床や研究を行う上で大きなメリットであり刺激にもなっている。さらに、空港が近いという利点を活かして、外国の医療機関とも良好なパートナーシップを築きながら神戸医療産業都市や医療の未来を拓いていくことができればなお良いのではないか」と提言。できることがあれば惜しみなく協力したいとの意向も示しました。
心疾患患者用リハビリ器具
今後は外来にも力を注ぎ、ポートアイランド内に限らず広く地域の医療機関と連携しながら、生活期のリハビリテーションにも目を配っていきたいと考えています。患者さんが退院後の生活を自分らしく過ごし、充実した人生を送るために、当院ができることを全力でサポートしていきます。