バイオものづくりをリードする独自技術で
産業界に変革を起こす
株式会社バッカス・バイオイノベーション
微生物の可能性に焦点を当てる
2020年に設立した株式会社バッカス・バイオイノベーションは、現在アジアで唯一「統合型バイオファウンドリ®」事業を展開している神戸大学発のスタートアップ企業です。バイオファウンドリとは、微生物からあらゆる物質をつくり出すバイオものづくりに必要なプラットフォーム技術を集積した事業モデルを指します。同社では、神戸大学の研究成果である先端バイオ技術にデジタル技術を融合した技術基盤により、特定の物質を高効率に生産する微生物の開発・改良から生産プロセスの開発までをワンストップで行っています。育成した微生物によって、医薬品や化粧品の原料、プラスチック、燃料など多種多様な物質の生産が可能となり、バイオものづくりは今後、大幅な市場拡大が見込まれている分野です。日本のバイオものづくりが発展する上で同社の技術は欠くことができず、産業界から熱い視線が注がれています。
神戸医療産業都市をバイオものづくり都市に
2023年、新エネルギー・産業技術総合開発機構によるグリーンイノベーション基金事業として、同社とカネカ、日揮ホールディングス、島津製作所との共同プロジェクト「CO2からの微生物による直接ポリマー合成技術開発」が採択されました。本プロジェクトは国が推進するカーボンリサイクルの実現に貢献するものであり、4社の技術力と知見を結集し、化石資源に依存しない循環型バイオものづくり技術の実現を目指します。丹治幹雄代表取締役社長は「本プロジェクトにおける当社のミッションは、CO2を原料に物質を生成する水素酸化細菌によってものづくりを行うためのプラットフォームを構築すること。成功すれば世界初となり、我々がこの分野をリードすることができるだろう」と期待を込めた展望を語ります。
また、神戸医療産業都市に拠点を置くメリットについて「神戸大学や神戸大学統合研究拠点等の関連機関と連携が取りやすく、2020年に新設されたバイオ系研究開発施設であるクリエイティブラボ神戸(同社の入居先)を利活用できることが大きい。加えて、バイオものづくりで連携できる企業やスタートアップが数多く集積していることも魅力であり、協業の可能性を感じている」と言及。神戸医療産業都市がバイオものづくり都市としても発展する未来を描き、挑戦を続けていきます。
バイオものづくりの拠点となるラボ
当社が世界のバイオものづくりを牽引し、大きな産業として確立することができれば、世界中から神戸に多くの企業が集まり、雇用創出にもつながります。神戸医療産業都市が市民の皆様にとっての誇りとなるよう、我々もより一層努力していきたいと思います。
多様な小児疾患に対し最先端治療を提供する
兵庫県立こども病院
難治性血液がんの最新治療をスタート
2016年に須磨からポートアイランドへ移転し、神戸医療産業都市の中核施設としての役割を担う兵庫県立こども病院。総合周産期母子医療センターや小児救命救急センター、小児がん医療センター、小児心臓センターなどを有し、小児医療の最後の砦として24時間体制で診療を行っています。
また、小児がんの拠点施設でもある同病院では、2023年5月から血液・腫瘍内科でCAR-T細胞療法を開始しました。この治療は、患者さん自身が持っている免疫細胞の一種であるT細胞を血液から採取し、がんと戦うように強化して体に戻すという高度な免疫治療法で、難治性の白血病やリンパ腫などの血液がんに対する新たな治療法として注目を集めています。CAR-T細胞療法を実施するには、副作用に対応できる院内体制の整備が求められることから、現在のところ限られた施設でしか治療を行うことができません。同病院は全国でも珍しい小児に特化したCAR-T細胞治療提供施設として、その活躍が期待されています。飯島一誠院長は、「1例目では主治医も驚くほど劇的に患者さんが回復し、高い効果を実感することができた。近々2例目の実施も予定しており、今後増えることが予想されるCAR-T細胞療法へのニーズに積極的に応えていきたい」と意欲を見せます。(2023.7.28取材日時点)
(左)ディープフリーザーより製品の取り出し
(右)溶解後の製品吸引
地域資源を生かした臨床研究を推進
国内でも有数の症例数を誇る同病院では、臨床で得た多様な経験や知識、データを活用し、臨床研究にも力を注いでいます。飯島院長も難病に指定されている小児ネフローゼ症候群の研究を長年にわたって続けており、臨床と研究活動にバランスよく取り組む医師が増えることを熱望しています。神戸医療産業都市には、企業や研究機関、大学と連携を図りながら臨床研究を推進しやすい環境が整っている点に大きなメリットを感じているとし、「我々もこの恵まれた環境を活用し、ポートアイランドに拠点を置く理化学研究所と毎年ジョイントシンポジウムを開催して互いの交流を深め、iPS細胞に関する共同研究も進行している。こうした実績を小児疾患の予防や治療の発展につなげていきたい」と話します。
また今後は、神戸医療産業都市に進出する企業・団体の協力を得ながら、院内システムのIT化を促進することが重要だと明言。「何かと制限の多い入院生活だが、患者さんにとってできる限りストレスの少ない環境を整えていきたい」と展望を語りました。
当院が活動を継続するためには、市民の皆様のご理解やご支援が必要です。ぜひ病院ボランティアや寄付などでご協力をお願いします。また、私が運営委員長を務めるドナルド・マクドナルド・ハウス神戸でもボランティアを募集していますので、個人や団体でお手伝いいただけると幸いです。