提供 神戸都市振興サービス(株)
最先端のAI技術で「隠れたパンデミック」に挑む
カーブジェン株式会社
スマホアプリで画像の診断をサポート
病気の診断や治療に不可欠な医療用画像。それを読み解く専門人材の不在・不足が世界の医療現場で深刻化しています。この課題に対し、最先端のAI技術で貢献するためにカーブジェンは設立されました。2021年の創設当初から注力したのが、細菌感染症領域のAI画像解析ソフトウェアの開発です。動機について代表取締役CEOの中島正和氏は、世界を脅かす薬剤耐性(AMR)の問題を挙げます。AMRとは、感染症の発症時に検査で正確に病原菌を特定できず、不適切な抗菌薬の投与により害のない細菌まで排除してしまい、結果、薬が効かなくなることです。中島氏は「このままでは2050年には世界で年間1000万人がAMRが原因で亡くなると予想されているこの隠れたパンデミックと言われる大問題に我々の技術を生かしたいと思った」と話します。
「BiTTE®-Urine」は、神戸大学医学部附属病院などとの共同開発によって誕生したスマホアプリ型の細菌感染症菌種推定支援AIソフトウェアです。細菌検査の過程で検出される画像をスマホで撮影すると、AIがそれを読み取り、菌種を推定して、適切な抗菌薬の候補を提示します。スマートフォンさえあればアプリストアからダウンロードして使用が可能。中島氏は「高額な機器では本当に困っている人に届かない。へき地や離島でも使いやすいものにしたかった」と、スマホアプリにした理由を明かします。この使い勝手の良さと精度の高さから、世界各地での利用が広がっています。
拠点を置き、KBICの魅力を再認識
神戸で生まれ育ち、以前から神戸医療産業都市(KBIC)への思い入れが深かった中島氏。「神戸医療産業都市構想がスタートした1998年は、まだ街に阪神・淡路大震災の傷跡が残り、仮設住宅もあったころ。その中で新たな事業にチャレンジする神戸のバイタリティには感銘を受けた。さまざまな人のリーダーシップで構想が実現できたことは本当にすばらしい」と称賛します。KBICに拠点を置いてからは、その魅力を改めて実感し、「他の医療クラスターと比べると街の規模がコンパクトで動きやすく、アットホームな雰囲気。コミュニティーのメンバーの結束力も強い」と明言します。今後は、臨床研究などを通して、近隣の医療機関との連携を深めながら、事業のさらなる発展を目指します。また、医療DXやAIを活用した業務効率化にも貢献し、働き方改革や人手不足といった医療業界の課題にも対応していきます。2030年に予定されている神戸空港の国際化によって、世界との交流がさらに活発になることにも期待を膨らませています。
臨床現場での使用風景(神戸大学医学部附属病院 大路剛先生)
豊かな文化と温かなコミュニティーが息づく神戸は、今や医療イノベーション最前線の地として世界に知られ、当社も地域の活力に背中を押されながら仕事に取り組んでいます。AIやバイオテクノロジーは身近な課題を解決する技術であることを、広く市民の皆さまに知っていただき、神戸の発展に寄与する事業を展開していきたいと思います。
ライフサイエンス業界発展の一翼を担う保存容器を開発
神戸バイオロボティクス株式会社
現場の課題を解決するために
新型コロナ検査などにも使われているプラスチックの保存容器は、遺伝子情報や創薬に関する研究にも広く用いられています。神戸バイオロボティクスはその独自の技術で2次元バーコート付きの保存容器を製造。世界で約20%、国内で約50%の市場シェアを誇る業界のトップランナーです。電気工学を専門とする創業者が、当時はまだ未成熟だったサンプル保存容器に着目。自身の持つ工学的知識を応用し、バイオテクノロジーの市場に貢献したいと、2001年より開発・製造を開始しました。
従来の保存容器の管理は、人の手によるラベル書きや貼り付け作業が主流で、手間がかかるうえにヒューマンエラーや長期保管による情報消失のリスクがありました。そこで同社は、独自の成型技術を用いて使いやすい形状を追求し、高度なレーザーエッチング技術を駆使して、各容器に2次元コードなどの個別コードを付与。それらをスキャナで読み取ることで、大量の情報を効率的にパソコンで管理できるようにし、作業効率の向上やヒューマンエラー防止を実現しました。
メイドインジャパンへの信頼
2022年に神戸医療産業都市に開設した神戸南事業所(研究開発センター)は、神戸空港を対岸に望むポートアイランド南側に位置し、生産設備を備えた同社の重要な生産拠点です。自社開発の設備を導入し、生産工程のほとんどをオートメーション化することで、衛生面に配慮しながら生産効率を高めています。また近年は、成型時に発生する廃棄部分を再利用し、プラスチック使用量を50%削減するなど、SDGsへの取り組みも進めています。
「世界的な研究機関や製薬企業が集積する神戸医療産業都市に工場を構えることは、私たちの悲願だった」と感慨深く話すのは、常務執行役員の上野博之氏です。今後の展望について、「海外の競合メーカーに負けない品質の高さが当社の強み。メイドインジャパンへの信頼は揺るぎなく、その信頼をさらに高めていくことが目標」と語ります。また、自社の技術力を生かした新たな事業への挑戦にも意欲を示し、「実現に向けて、まず情報発信に注力し、当社の知名度を上げることが先決。今までは裏方に徹してきたが、神戸で連携できるパートナー企業や機関を探し、表に出る仕事もしていきたい」と力を込めました。
2次元バーコード付保存容器
近年、バイオテクノロジー技術は目覚ましい発展を遂げ、ライフサイエンス業界は新たなステージを迎えています。当社では、日本製だからこそ追及できる品質や革新性をもった製品を提供することで、お客様のより生産的で効率的な研究や事業を支援し、ライフサイエンス業界と神戸医療産業都市の発展に貢献できるよう努力を続けてまいります。