2024.09.02
公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構第12回 神戸先端研セミナー
- 企業・研究者向け
- 医療関係者向け
詳細な内容
神戸先端医療研究センターは、新しい医療に繋がりうる基礎研究、正常と病気を理解する研究、臨床試験まで行った研究など、幅広く医学生物学研究の講演等を企画してまいります。研究者・技術者の参加をお待ちしております。
【プログラム】
◆講 師
須田 立雄 先生
昭和大学名誉教授、日本学士院会員
◆演 題
私のビタミンDと骨の研究
―活性型ビタミンDの同定から破骨細胞誘導因子の発見に至るまでー
◆内 容
私の先祖は江戸時代末期にルーツを持つ口中医で、私はあまり深い考えもなく、1956年、東京医科歯科大学・歯学部に進学した。しかし、歯学部卒の仲間が目指す臨床歯科医になりそこねた私は基礎研究の道に進むことになった。
私が骨代謝研究を始めたのはNeuman 先生の名著The Chemical Dynamics of Bone Mineral (シカゴ大学出版、1958年) との出逢いが契機となったように思う。当時、明らかにされていた「骨代謝調節因子」はごく限られていて、その中で最も重要と考えられていたのが「ビタミンD」であった。私は大学院を修了した頃からビタミンD研究に特化した留学先を探し求めた。幸いなことに、1968 年、私はH.F. DeLuca 先生の研究室(Wisconsin 大学・生化学部)に留学する機会を得て、活性型ビタミンDの構造決定のプロジェクトに参加した。活性型ビタミンDは1971年、米英の2つの研究グループにより1α,25(OH)2D3と同定された。帰国後、私は中外製薬との共同研究で、その合成誘導体 [1α(OH)D3] の創薬研究を開始した。その結果、1α位に水酸基を持つが、25位には水酸基を持たない1α(OH)D3がin vivo で1α,25(OH)2D3の代替物資となることが判明し、1981年、1α(OH)D3はアルファロール(Alfarol)の名前で慢性腎不全患者のCa代謝異常改善剤として上市され、1983年には骨粗鬆症にも適用が拡大された。
1977年、私は昭和大学歯学部に移り、「骨 と ビタミンD」 に特化した研究を開始した。 1981年、阿部 悦子氏がビタミンDの細胞分化誘導作用を発見した。1988年には高橋 直之氏と宇田川 信之氏が破骨細胞をin vitro で効率よく形成させる骨芽細胞とマクロファージの共存培養法を確立し、1α,25(OH)2D3が骨芽細胞に働くとODF (破骨細胞分化因子)を誘導し、活性型ビタミンDがマクロファージを破骨細胞に分化させるという作業仮説を提唱した。ODFは、1998年、雪印乳業がその前年発見した破骨細胞形成抑制因子OCIFの結合タンパクとしてクローニングされた。同年、米国のAmgen 社も骨を守る因子Osteoprotegerin(OPG)をクローニングし、その結合蛋白としてRANKL(Receptor activator of NFκB Lignd) を同定した。OCIFとOPG、ODFとRANKLはそれぞれ同一蛋白であった。このような経過で、ビタミンD による破骨細胞誘導のメカニズムが分子レベルで証明された。
本講演では、活性型ビタミンD [1α,25(OH)2D3]の同定から破骨細胞誘導因子(ODF/RANKL)を発見するまでの経緯を詳しくお話ししたいと思う。 私の研究体験が若手研究者の参考になれば幸いである。
会場住所
〒650-0047
神戸市中央区港島南町6丁目3番地の7
お問い合わせ先
神戸医療産業都市推進機構 セミナー事務局
078-306-0708
ibri-seminar@fbri.org
入力者
神戸医療産業都市推進機構