先端医療研究センター感染症制御研究部

研究内容

感染病態発生機序を研究し、感染症の診断・治療法の開発につなげます。

WHOによると世界には3億人以上の肝炎ウイルス感染者がいると言われています。この肝炎ウイルスの感染により肝硬変や肝がんが起こり、毎年100万人以上の方が亡くなられています。この状況は日本も例外でなく肝炎ウイルス感染症は重大な公衆衛生上の問題となっています。本研究部は、肝炎ウイルスがどのように肝細胞内で持続的に生きながらえ、またその後、肝硬変や肝細胞がんを引き起こすのかを研究していきます。ウイルスが肝細胞に持続的に感染し続けるメカニズム、それに引き続いて病気が発生する仕組みを詳細に調べることで、ウイルスの排除方法、重症化予測、病態進行阻止法の開発の糸口を探っていきます。

感染症制御研究部
客員部長 村松 正道(むらまつ・まさみち)

研究事業内容、進捗状況及びこれまでの成果、今後の方向性

本研究部は、2021年度より新設された研究部です。現在、研究室をたちあげている最中です。
今後、研究が進捗し成果が上がれば、情報を更新していきます。

日本では、肝硬変や肝細胞がんを起こす肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスが2トップになります。B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスはそれぞれ、DNAとRNAをゲノムに持つウイルスでウイルス学的には違うウイルスです。後者は、ここ10年で非常に良い抗ウイルス剤が複数実用化され、ウイルスを肝臓から駆除することも現実的なところまで来ています。一方、前者のB型肝炎ウイルスの抗ウイルス剤は、逆転写阻害剤が一般に使用されています。2012年にB型肝炎ウイルスが細胞に感染する際に必要不可欠な感染受容体の発見により、急速にウイルスの肝細胞でのライフサイクル、とりわけ侵入プロセスの理解が進みました。これらの基盤情報をもとにウイルスの侵入を阻害する薬剤が開発され、治療に使われつつあります。

B型肝炎ウイルスは、cccDNAと呼ばれる2本鎖環状DNAを肝細胞の核内に潜ませる能力があります(図1)。逆転写酵素阻害剤は非常に優秀な抗ウイルス剤ですが、残念なことに一旦作られたcccDNAを核から排除できず、治療を中断するとcccDNAを起点としてウイルスが再び作られる可能性があります。新規の侵入阻害剤もやはり同じ弱点を抱えています。従って、cccDNAをいかにコントロールするかが、体内のウイルス排除に極めて重要であり、新規抗ウイルス剤開発の大きな課題となります。

B型肝炎ウイルスによる発ガン細胞の解析から、発ガン細胞の多くがB型肝炎ウイルスのDNAが肝細胞のゲノムDNAに取り込まれた状態(ウイルスゲノム挿入現象)が観察されます(図2)。
この現象については現在のところ、逆転写後に作られた部分一本鎖ウイルスDNA (RC-DNA)、あるいは損傷を受けたcccDNAが、宿主のゲノムに何らかの機序で取り込まれ、安定化されたものと想定されています。
B型肝炎ウイルスは、発がん活性が示唆されている遺伝子(HBx等)を持っています。これらのがん遺伝子が挿入された遺伝子座から恒常的に発現することが、がん化を大きく進めるのではないかと推察されています。

本研究部では、cccDNAがどのように肝細胞内に潜伏するのか、またウイルスゲノム挿入がどのように起こり肝細胞をがん化させるのか、を研究していきます。そこで明らかにした基盤情報をもとに新規診断法、治療薬開発の糸口を見つけたいと考えています。

またcccDNAやウイルスゲノム挿入現象といったテーマ以外にも、さまざまな感染病態研究を手がけていく予定です。まだ始まったばかりの研究部ですが、よろしくお願いします。