医療機器等事業化促進プラットフォーム成果事例

成果事例 株式会社村田製作所

製品化した製品・サービス

小型、モバイルの「自動カフ圧コントローラ」の共同研究開発 自動カフ圧コントローラ SmartCuff

製品化・実用化までの流れ
自動カフ圧コントローラ SmartCuff

本品は、気管切開チューブ等のカフ内圧をマイクロプロセッサにより自動制御、調整、維持する自動カフ圧コントローラです。
カフ内圧を推奨範囲内(20~30㎝H2O)に保つよう設定でき、カフ圧の不適切な設定によるエアリークや分泌物の垂れ込み、気管壁の損傷などを抑えることができます。 開発にあたっては、現在、現場で主に使われている手動のものをベースに、使い勝手を考慮して同じようなサイズ感でモバイルのものを目指しました。製品化までには約4年をかけ、リスク検証等を十分に積み重ねて完成させました。
大きな特徴は3点あります。まず小型化したことです。電子部品メーカーである当社が培ってきた小型ポンプの技術力を活かし、幅66㎜×高さ104㎜×奥行き26㎜の手のひらサイズで軽量化に成功、片手で使っていただけます。
2つ目はモバイル化です。乾電池(単3、2本/ソフトウェアや回路技術等の省電力設計を施し、標準で約2週間使用可能です)、または充電池のどちらでも使用していただける、AC電源なしのモバイルタイプなので、持ち運びも簡単です。
3つ目はアラーム機能の充実です。ラインが閉塞する等、圧力センサーが異常を検知した場合は、アラームインジケーター、液晶画面のアラーム表示、アラーム音によって警告する等、様々なリスクを想定して安全性を担保しています。一方、平常時の音はできるだけ気にならないように抑えて、静音化しています。
さらに液晶画面には設定値を右肩に小さく、現在値を真ん中に大きくデジタル表示し、シンプルでわかりやすい操作面にしており、医療従事者の方にも使いやすいように設計しています。

インタビュー
開発者の声

初めての医療機器開発を「プラットフォーム」がサポート

ー開発の背景ときっかけは?

加藤 当院の呼吸療法チーム(RST)では、気管切開チューブ等のカフ内圧を調整するため、主に手動カフ圧計を使っているのですが、人の手でカフ圧の微妙な設定をしなければならず、いわゆる“ヒヤリハット”が少なくなかったのです。と言って、常に適切なカフ圧を維持できる自動のものの既存品は、大きくて使い勝手があまり良くなく、高額です。そこで在宅介護分野も視野に入れてより広く使えるよう、小型でモバイル化された自動カフ圧コントローラを開発できないかと考え、「プラットフォーム」に村田製作所様との間に立っていただきました。

伊佐 当社は2012年1月に神戸医療産業都市に入居したときから、「プラットフォーム」の支援を得ていました。「プラットフォーム」と加藤さんはじめ西神戸医療センターの方々、当社の三者で、現場からの困りごとのニーズ抽出会議を重ねるなか、加藤さん側からのニーズと電子部品メーカーである当社の製品の一つ、小型ポンプの技術が結びついたのです。

ー開発でとくに苦労された点は?

東山 開発を始めたのは2013年で、形についてはすぐに高評価をいただけて1年ほどはトントン拍子に進んだのですが、私どもにとって初めての医療機器開発ということもあり、リスクの洗い出しとその検証に3年程かけました。今まで手掛けていた電子部品とは異なり、明確なスペックが提示されるわけではなく、たとえば「電池は、2週間は持たせてほしい」というご要望に対しては、どのような使用条件になるのか?電池残量アラームはいつ出せばいいのか?等の詳細な仕様を数値に落とし込むことに非常に苦労しました。でも最初に看護師さんたち現場の声をじっくりと聞かせていただいたことで、皆様の抱えている不安を何とかしたいという強い思いがあり、開発に取り組んできました。

伊佐 加藤さんは臨床工学技士で、臨床現場で実際に医療機器を扱っていらっしゃいますし、「プラットフォーム」のアドバイザーもされており、私ども企業の人間にもわかりやすい言葉でご説明いただけて大変助かりました。また、医療機器のコンセプトや一般的名称を検討する時にも、弊社は新規参入企業で経験も無く悩む事も多々あったのですが、プラットフォームによる薬事相談やマッチングを通じて伴走してくださり、とても心強かったです。

加藤 最初は言語化されていない部分のニュアンスを伝えるのに少し苦労しましたが、定期的にお会いしてコミュニケーションを深めていけました。

ー開発を終えていかがでしょうか。

加藤 病院だけでなく、在宅の患者さん、ご家族、介護施設等、もっと広く使ってもらえたらと思っています。まず地元神戸から普及させられるといいですね。

東山 非常に時間をかけて評価を行い、納得がいくかたちに持ってこられたと大きな手応えを感じています。これを出発点に今後も現場の不安やリスクを、私どもが持つ技術やアイデアで改善していきたいと思います。

伊佐 今、やっと第一歩を踏み出したところですが、いずれはこの製品でデータを蓄積し、それを活かして医療現場を変えていけるよう、IoT化へと繋げていけたらと考えています。しかし医療機器開発は企業側のシーズから入ってはいけないと考えており、第一に現場の方たちが持つ課題、ニーズをしっかりつかんだ上で、解決できるような製品開発を目指していきます。

ユーザーの声

西神戸医療センター 救急看護認定看護師 瀧澤 紘輝さん

従来の手動カフ圧計を使用していたときは「本当に示された圧に設定されているのだろうか」と、少し不安を感じることもありました。手動カフ圧計ではカフの調節がむずかしく、「コツ」をつかむまで時間がかかるのです。また体位変換を行った際などにカフ圧が変化し、バッキング(咳、咳嗽)が起こることも少なからずありました。

自動カフ圧コントローラ SmartCuffは自動で圧を調節してくれるので、「コツ」がつかめていなくても適正に圧を設定できますし、体位変換時などのカフ圧変化も起きにくく、唾液のたれ込みなどを予防できると感じています。自動カフ圧コントローラは他にもありますが、大きくて場所をとります。自動カフ圧コントローラ SmartCuffは手のひらサイズなので、ベッドサイドにあっても邪魔になりにくく、今後はICUのみならず、在宅や施設などどこでも使えるのではないかと期待しております。