2023.11.16
公益財団法人 神戸医療産業都市推進機構第8回 神戸先端医療研究センターセミナー
- 企業・研究者向け
- 医療関係者向け
詳細な内容
神戸先端医療研究センターセミナーは、新しい医療に繋がりうる基礎研究、正常と病気を理解する研究、臨床試験まで行った研究など、幅広く医学生物学研究の講演等を企画してまいります。研究者・技術者の参加をお待ちしております。
【プログラム】
◆講 師
幸谷 愛 先生 大阪大学微生物病研究所感染腫瘍制御分野
◆演 題
脂質修飾による細胞外小胞の新機能
◆内 容
エクソソームを含む細胞外小胞(EV)は、タンパク質やマイクロRNAを輸送することにより、細胞間コミュニケーターとして機能する。
我々は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)リンパ腫において、腫瘍細胞から分泌されるEVがマクロファージに取り込まれることによって、それらを腫瘍随伴マクロファージ(Tumor associated macrophage; TAM)に変化させ、腫瘍微小環境の形成に必須な機能を示すことを明らかにしてきた。さらに最近、リンパ腫由来のEVの腫瘍促進作用が、分泌型リン脂質加水分解酵素であるホスホリパーゼA2(sPLA2)によって引き起こされる脂質代謝を介して増強されることを明らかにした。
sPLA2によるEV膜リン脂質の加水分解は、脂肪酸、リゾリン脂質、およびそれらの代謝産物の産生を増加させた。sPLA2処理されたEVは小さく、自己凝集死、マクロファージでの取り込みを促進し、TAMにおけるサイトカイン発現と脂質メディエーターシグナル伝達を増加させた。加えて、EVはT細胞などEVを取り込まない細胞においても、細胞表面のGPCRを活性化した。内因性sPLA2を薬理学的に阻害すると、EBV感染ヒト化マウスにおけるリンパ腫の増殖が抑制されたが、sPLA2処理EVを投与すると、リンパ腫の増殖が回復した。さらに、EBV感染の有無に関わらずヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるsPLA2発現は、患者の生存期間と逆相関していた。
以上から、sPLA2を介したEVの修飾は腫瘍の発生を促進し、ヒトでも同様のシステムが駆動していることが示唆された。重要なことに標的細胞以外の細胞に対しても接着によって生理的な機能を示すという新しい作用機序が示された。
会場住所
〒650-0047
神戸市中央区港島南町6-3-7
お問い合わせ先
神戸医療産業都市推進機構 セミナー事務局
078-306-0708
ibri-seminar@fbri.org
入力者
神戸医療産業都市推進機構